技術情報
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鍛造用語集
鍛造用語集【は】
ハードプレート | 金型から受ける圧力を分散させて金型取付け台に伝えるため、両者の間に装入する高強度金属板。 |
バーニング | 過熱のため、粒界が溶け始めたり、酸化されたり、又は異常な組織が生じるなどによって、回復不可能となった欠陥。 |
破壊試験 | 素材や製品を破壊するか、商品価値の下がるような方法で行う試験。引張り、圧縮、曲げ、ねじり試験、疲労、クリープ試験などが、その例である。 |
破壊靱性 | 鋼材に内在する微小欠陥が、外力によって、拡大、伝播して、破壊に至ることに抵抗する性質。初期切欠き及び疲労予亀裂を有する試験片に、変位計を取り付け、荷重一変位曲線を自動記録させ、破壊靱性を測定する方法がある。 |
白色潤滑剤 | 白色系潤滑剤の主成分はガラス、カルボン酸および高分子系に大別される。黒鉛系の潤滑剤が黒色であるのに対して、白色または無色であるので、クリーンな作業環境の観点から導入が広まっている。 |
破断 | 壊れて分断すること。引張試験片が、荷重に耐えられず、壊れて引きちぎれること。 |
バッチ炉 | 被加熱物を定位置で加熱する箱形の加熱炉。材料を出し入れする開口部があり、熱が放出されるので熱効率が悪く、通常15%以下である。この炉の利点は、大きさ、形状に関係なく何でも加熱できること。逆に欠点としては、放熱が多く作業環境が高温となることである。用途には、鍛造材料の加熱用又はワークの熱処理用などがある。 |
ばり | 鍛造の際、金型のすき間からはみ出して出来る薄い材料部分。ばりの効果として次の3点が挙げられる。①型割線上でインプレッションの間から早期に材料が流れ出るのを妨げ、型鍛造の最終段階にばりを出すことによって、材料をインプレッション内に充満させる。②材料の体積はインプレッション体積より大きく取られ、余肉がばりとして押し出されることによって、機械プレスの場合の過大荷重を防ぐ。③上型と下型の打撃を弱めるための緩衝の役目をし、これが金型の衝撃による破壊を防止する。 |
ばり厚 | 型鍛造品又は荒地に付いているばりのばり道(フラッシュランド)部分の厚さ。ばり厚さの設定に際しては、金型インプレッションへの材料の充満特性、型打ち荷重、金型強度などが考慮される。ばり厚さが大きいと、インプレッション内の材料の充満が悪く、小さいと型打ち荷重が大きくなり、型割れが生じやすくなる。 |
ばりかえり | ばり抜きの際、ばりが完全に切れず、その一部が折れ曲がって鍛造品に残った状態。 |
ばりかじり | 鍛造品の本体に食い込んで、ばりが抜かれた状態。 |
ばり出し型鍛造 | 型鍛造においては、型内部に材料を完全に充満して所要の製品形状を得るが、加工の最終段階では材料流れは閉塞状態に近づくために、加工圧力が増大して型が破損しやすくなるし、欠肉部が生じる。そこで、余分の材料を型の外周方向へ「ばり」として逃がすことで、圧力の増大を避けながら型充満を図る鍛造をばり出し鍛造と呼ぶ。半密閉鍛造。熱間鍛造で多用されている鍛造形式。 |
ばり抜き | 型鍛造において、鍛造品の外周部又は中心部に余肉(ばり)が発生した場合、この余肉を鍛造品から切り離す作業。ばり抜きには、冷間(常温)で行う冷間ばり抜きと、鍛造後、直ちに行う熱間ばり抜きとがある。一般に、小物鍛造品は冷間で、大物鍛造品は熱間でばり抜きされる。炭素鋼、低合金鋼は冷間でも可能であるが、高合金鋼は、冷間で行うと応力によりばり切断面に割れが発生しやすいので、熱間ばり抜きを行う方がよい。トリミング。 |
パンチ | 鍛造の際、材料内部に打ち込む金型の総称で、抜き型用パンチ、アプセッタ用パンチ、穴あけ用パンチ等がある。ポンチ。 |
半密閉型鍛造 | 鍛造の際に型で材料を全て密閉せずに材料をばりとして流出しながら、所要の形状寸法を与える鍛造手法。ばりのために材料歩留まりは悪くなるが、密閉型に比べて型に作用する過大な応力を緩和できる。ばり出し型鍛造。 |
半割り型 | 成形終了後にワークを型から取りだし易いように、型の構造を半割にした型。粉末成形型に多い。 |
ピーリング材 | 線材や棒材の表面傷を除去するために外皮をダイスや切削加工で削り取った素材。 |
非調質鋼 | バナジウム、ニオブ、チタンなどを微量添加し、熱間圧延又は鍛造において温度や冷却速度などをコントロールすることにより、微細な炭・窒化物を析出硬化させ、別の調質処理を省略させた鋼。また、その他にもべイナイト組織やアシキュラーフェライト組織により、強度、靱(じん)性を高めるねらいの非調質鋼もある。 |
ビッカース硬さ | ビッカース硬さ試験において、用いた試験荷重(N)を永久くぼみの表面積(㎟)で除した値。その値にHVを付して表し、数値には単位を付けない。 |
火造り | 熱間での自由鍛造をいう。 |
引張試験 | 引張試験機を用い、試験片又は製品を徐々に引っ張り、降伏点、耐カ、引張強さ、降伏伸び、破断伸び、絞りなどを測定する試験。 |
非破壊検査 | 素材や製品を破壊せずに、欠陥の有無、位置、大きさ、形状、分布状態などを調べる検査。超音波探傷検査、磁粉探傷検査、浸透探傷検査、渦流探傷検査などがある。 |
火花検査 | 鋼塊、鋼片、鋼材及びその他の鋼製品をグラインダを使用して研削し、発生する火花の特徴を観察することによって、鋼種の推定又は異材の鑑別を行う検査。 |
表面粗さ | 固体の表面の凹凸の程度。対象物の表面からランダムに抜き取った各部分における中心線平均粗さ(Ra)、最大高さ(Rmax)又は十点平均粗さ(Rz)のそれぞれの算術平均値。 |
表面欠陥 | 本来は、表面に存在する格子欠陥を総称していうが、焼付き等の表面損傷や材料流れの不具合による折込み等の表面きずもさす。 |
表面処理 | 金型、鍛造部品の内部性質を変えることなく、表面のみを処理して特性を変えること。金型の場合は、内部に靱性を持たせたまま、耐摩耗性、耐疲労性、強度を付与する。その方法には、浸炭法、窒化法、表面焼入れ、各種表面コーティングなどがある。また鍛造部品では、冷間鍛造の前処理としてのりん酸塩皮膜処理、しゅう酸塩皮膜処理やショットピーニング処理等がある。 |
表面脱炭 | 鋼を900℃以上の高温で熱した場合、空気中の酸素の酸化作用ににより、鋼材の表面層から炭素が拡散離脱し、炭素含有量が少なくなる現象。 |
ビレット | 鋼のインゴット又は連続鋳造材から、板、棒、管材などを圧延によって作る途中の状態で、断面がほぼ正方形で、通常1辺の長さが130mm以下の鋼片、又は断面が円形の鋼片。また、鍛造用に圧延棒材から切断した素材も、ビレットと呼ばれる。 |
ビレットシャー | 1対の刃によって材料に剪断力を作用させ、所定の長さに切断する機械。機械及び能力は普通トンで表される。ビレットシャーの形式としては、上刃が垂直運動する垂直形(又はプレス形)が主流である。上刃が、1点を支点として、下刃に対し、はさみのような往復角運動をするアリゲータ形があるが、専らスクラップを切断するのに用いられている。プレス形のシャー切断は、、鍛造材料の量産切断に向いており、多く使用されている。しかし、切断端面の直角度や端面精度について、管理が特に必要である。 |
フェライト | α鉄が他の元素を固溶した状態。炭素の最大固溶量は0.02%(A₁温度)であり、固溶限度以上の炭素は鉄との化合物(セメンタイト)を作る。フェライトは、軟らかくて展延性が大きく、また強磁性体である。 |
フォン・ミーゼスの降伏条件 | 偏差応力の二次の不変量、八面体剪断応力、あるいは弾性剪断ひずみエネルギーがある限界値に達したとき、塑性変形が開始するという条件。ミーゼスの降伏条件。 |
歩留まり | 投入素材重量に対する製品重量の割合。 |
ブルーム | 断面がほぼ正方形又は長辺が短辺の約2倍以下の長方形で、通常一辺の長さが130mmを超える鋼片。通常、ブルームは、圧延後、連続的に鋼片圧延機により、ビレットなどに圧延される。 |
プレシジョンタイプ鍛造 | アルミニウム合金の型鍛造の1種で、プロッカ、コンべンショナルタイプ鍛造の延長上にあって、最終部品形状に忠実に成形する鍛造。鍛造品の大部分が黒皮のまま使用されることを前提として製品設計するので、フィレット、コーナRはより小さく、リブ、ウェブも薄くなり、寸法精度も高くなる。プレシジョンタイプ鍛造は、ロードラフト鍛造、ノードラフト鍛造、シームレス鍛造に細分化できる。 |
プレス能力 | そのプレスの能力として表示される呼称能力。普通は圧力能力をもって代表される。圧力能力は、加工に必要な圧力に対し製品精度及び金型寿命上の要求から機械に十分剛性を持たせるため、何割かの余裕を持つようにする。実際のプレス選択のためには、圧力能力の外に、トルク能力、仕事能力の3つが表示されないと完全ではない。 |
粉末鍛造 | 粉末冶金と鍛造の技術を複合したものであり、金属の圧粉体又は焼結体を荒地として用いる鍛造。粉末を成形、焼結してプリフォームを作り、それを熱間で1ストロークで鍛造して製品に仕上げる。予成形工程を省略し、後加工である歯切り及び機械加工を必要としない精密鍛造品を得ることをができる。焼結品を使う場合を焼結鍛造ということもある。 |
平衡状態図 | 平衡状態において、すべての温度範囲にわたり、あらゆる組成について、合金の固体並びに液体間の相対的な量的関係や組織の変化を表した図。合金成分の数により、二元系、三元系平衡状態図がある。鉄一炭素系は二元系の代表的な平衡状態図である。 |
閉塞鍛造 | 密閉鍛造の1種で、材料を金型内に閉じ込めてから、パンチによって材料を排除し、金型内の空間を満たす形成方法。複動機構(タブルアクション)を有するプレスやダイセットが必要である。密閉鍛造よりも複雑形状の製品ができる。 |
べイナイト | 鋼のオーステナイトの冷却変態の1つで、パーライト生成温度とマルテンサイト生成温度(Ms点)との中間の温度範囲で生じた恒温変態組織。顕微鏡的には、パーライト生成温度近くで、羽毛状のべイナイトができる。温度の低いところでできるべイナイトは針状を示すことが多い。前者を上部べイナイト、後者を下部べイナイトという。べイナイトは、マルテンサイトより硬さが低く、高速度鋼にこの組織を与えるともろさが小さくなる。 |
変形抵抗 | 材料を所定の形状に永久変形させるのに要する単位断面積当りの力。流れ応力。 |
変形抵抗曲線 | 塑性変形中の相当応力を相当そせいひずみに対して表した線図。 |
偏析 | 溶融合金が凝固する際、最後に凝固する部分に凝固温度の低く、不純物の多い組成を持ったものが集ること。鋼のインゴットは、周辺から凝周し始め、中心部は最徴に凝固するから、中心部に偏析が集まる。このような偏析をマクロ偏析という。また鋳造組織において1本の樹枝状晶における根幹部と樹枝間の成分の相違、粒界近傍と粒内の間の偏析のような顕微鏡的スケールでの偏析をミクロ偏析という。 |
変態 | 温度が上昇又は下降したために、ある結晶の空間格子の型が他の空間格子型に変化する現象。変態の起こる温度を変態点という。この変態現象を利用して、金属の物理的、機械的性質などを変えるのが熱処理である。鉄鋼には、Ao、A₂(磁気変態)、A₁、A₃、A₄、Acm変態などがある。また、加熱及び冷却の際の変態を表すために、それぞれc及びrを付記する。例ばAc₁は、加熱の際のA₁変態を表す。 |
偏肉 | 鍛造品の断面の肉厚の片寄りによる不一様。 |
棒鋼 | 棒状に圧延又は鍛造された鋼で、所定の長さに切断された鋼材。断面の形状は、円形、正方形、六角形、長方形などのほか、特殊な形状を持つもの(異形棒鋼)がある。なお、コイル状に巻かれたバーインコイルも棒鋼に含めていうことがある。 |
ホワイトメタル | 軸受用合金。バビットメタルと呼ばれるSn系合金とPb系合金とがある。Pb系軸受合金は鉛バビットといわれ、Sn<30%,Sb<15%のPb合金で、一般に鋳造で作られる。 |